M'4

ルービックキューブで学んだことをまとめます

スクエア-1の解法を知らないまま解いてみた(再現性なし)

急にスクエア-1が解きたくなった

スピードキューバーの皆様、こんばんは。かわむです。

クリスマスの夜に突然 「そうだ、スクエア-1を解いてみよう」と思い立ち、もろもろ試行錯誤の結果、二日後に無事解くことができました。解き方をほとんど知らない回転パズルに対して、試行錯誤しながら少しずつ探索を深めて行く過程が面白かったので、自分自身の備忘として記録しておきます。

念のため申し上げておきますと、本記事を読んでもスクエア-1が解けるようにはなりません。 解き方を知りたい方は、インターネットの海で解法を調べましょう。

スクエア-1って何?

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スクエア-1外観
こんな外観の回転パズルです。大きさはほぼ3x3x3と同じですが斜めに切り込みが入っており、少し回すとすぐにトゲトゲした形になります。

2018年11月に購入していたようで、家に置いてありました。Triboxさんで「マイナーパズルセット ベストチョイス」という3点セット(ピラミンクス、スキューブ、スクエア-1)を買ったことがあって、その中に含まれていたんですよね。シールから判断すると、X-Man Designのものだろうと思いますが、具体的な製品名は何でしょうね?磁石は入っていないように見えるので、X-Man Design Square-1 Voltというものでしょうか? 家にこれしかないので比較もできません。

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スクランブルしたところ

これはWCA公式大会の17種目に入っているパズルの一つですが、私はこれまでに解法を覚えて解いたことがありませんでした。ただし、公式競技の一つとしてそれなりに多くの競技者がいるため、公式大会やオフ会などで誰かが解いているのを見たことはありました。3-Styleの気持ち悪い特殊な指使いと似ていて、U面とD面が高速で移動しながらR2をたくさんしているうちに、魔法のように揃っていく謎の物体、という認識でした。

解き始めるまでに、事前知識として知っていたのは、次のようなことでした。つまり、「門前のキューバー、習わぬスクエア-1を解く」ということはなく、基本的なことしか知りませんでした。

また、すでにスピードキューブ向けの解法が探索されているようで、いくつかリソースをたどれば解き方を調べて完成させられる!ということは何となくわかっていました。そして、ちょっととっつきにくい形状しているからか、解法を見ずに自力で解こうとする人はあまり多くないのだろうと思っていました。最初は「本当に解けるのかな、これ…」と思っていましたが、Twitter上のアンケートでキューブ関係者に伺ったところ「1日で解けた」「1週間で解けた」という方が10%超いらっしゃったので、人知を超えるほど難しいパズルではないのだろうと思い、安心しました。

スクエア-1についての事前知識が少なかったことから、「自分で試行錯誤を繰り返しながら、パズルの解き方を考える」という本来のパズルの楽しみができる数少ないものだったので、とりあえずやってみようという軽い気持ちでスタートしました。Twitterのタイムラインで別のパズル(マスタースキューブ)を自力で解こうとされていた方がいらっしゃったので、それに刺激を受けたのです。

まずは動きを観察する

さあ、やってみましょう。ハッシュタグは#square1challengeです。

スクランブルする前に、いくつか3x3x3の既知の手順を回しながら、巡回手順を探します。このような回転パズルに共通する特徴として、同じ手順を有限回繰り返せば、いつか必ず元の状態に戻るというものがあります。ちょっと特殊な形をしているスクエア-1でもきっと同じだろう、と思いながら、初期状態を崩さない範囲で巡回する手順を探していきます。

この時点で気づいたこと、驚いたこと

  • あっという間に四角くなくなる。こわい。
  • 回転が30度単位。小さいパーツと大きいパーツがある。
  • そもそも持ち方がわからない。(赤F、黄Uのようにして持つのが標準的らしい?)
  • U面とD面を交換するときにR2のように回すが、軸があっていないとR2できないことがある!
  • E列は左右非対称。U2 D2 R2を繰り返すと、E列だけが反転する場合がある。

1日目:スクランブルして、始める

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スクランブルできた…かな?
少しずつ巡回する動きがわかってきたところで、ようやく四角い形を捨てる勇気が出ました。正しい回転記号もまだ読めませんので、適当に上を崩して下を崩して、とやります。どこまでやれば十分にスクランブルされたことになるのかわからなかったので、上下が完全に四角ではなくなったあたりで中断しました。

さらにぐちゃぐちゃにする

どうやらまるでスクランブルできていなかったようで、さらにぐちゃぐちゃにします。 ウーム、基準がわからない…。このくらいでいいのでしょうか?という気分になりつつ、ようやくスクランブルを終えます。

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さらにスクランブルしたところ

小並感のある感想

  • U面を動かしてR2(スラッシュ?/記号)するだけではスクランブルできないように見える。
  • 小さいパーツ(30度)がいくつか集まると、角が鈍角になるため、フィンガートリックが非常にやりにくくなる。

まずは四角くすることが大事らしい

前述のように、まずは四角い形にする(これを「成形」と呼ぶらしい)、そこから何らかの手順をやることで完成するパズルであることがわかっていたので、どうにか上下を交換しつつ四角い状態に持っていけないか試行錯誤を始めます。

当面の指針

  • 最初の時点で、成形するためには大きなパーツ(60度)と小さなパーツ(30度)が交互に挟まれるようになればよい ということに気づいたので、これを目指して進めていきます。
  • 同時に、大きなパーツだけあつめて花びらっぽい形も作れるみたいだということにも気づきました。芸術点の貰えそうな図形がいくつもできます。

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きれいな形

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花びら型

  • 白いパーツ8個。黄色いパーツ8個。これがそれぞれエッジ4つとコーナー4つに相当するが、エッジとコーナーの場所を入れ替えることができるように動く。
  • R2(スラッシュ?縦回転?反転?)したときに上下のパーツの個数は維持されない。角度のみが維持される。
  • 四角くする→U面の色を揃える、まではできそうだと思ったが、どうやってPLLみたいのをすればよいのか謎が残る。

いつのまにか四角くなった!成形!

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四角い形に戻った!

ついに四角い形に戻すことに成功しました!成形! この前後で、成形するためにはその一歩手前の形にしてからR2をする必要があるということに気づいていました。後日描いた絵がこちら。

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成形の一歩手前

この右図のような形状になってからR2すれば、無事に成形が終わるわけですから、この形に持っていくためにはどのようなU面/D面の形状にすればよいのかを連鎖的に考えることで、成形することができました。このフェイズは手順や回転記号を意識するというよりも図形の形状のパタン認識処理をしながら一歩ずつ進んでまた戻るということをしていたように思います。(もちろん、スピード解法においては「このパタンが来たらこの手順!」と1-Lookでやるのでしょうけど)

ここから3点交換の手順を探すが見つからず、力尽きる

さて、どうにか四角くすることができたので、あとはU面とD面の色を揃えていくフェイズになりました。おそらくOLLに相当するような1-Lookで揃える手順があるのでしょうが、私にはわからなかったので、エッジだけ、コーナーだけを動かして交換できるような手順はないか?という点に絞って探していきます。

まず、上下のエッジを交換する手順が見つかりました。 実はこの時点で、自分だけがわかる回転記号を作って、メモしながら解くようにしていました。UU2は3x3x3と同じように90度回転しますが、U(1)(U方向に30度回す)やD'(1)(D'方向に30度回す)などの記号を作りました。この記法でいうところの、 U(1) R2 U'(1) R2 U2 R2 U2 R2 U2 という手順によって、上下のエッジ2点が交換されることがわかりました。
(本来の回転記号でいうと、 (1,0)/(-1,0)/(6,0)/(6,0)/(6,0)/ )という手順になります。)

しかし、なかなかコーナーについては見つかりませんでした。U面どうし、D面どうしで交換する手順の組はいくつか見つかるものの、U面とD面のステッカーどうしを交換する手順がなかなか見つからず、四苦八苦していました。

1日目はここで力尽きて終わりました。

パーツのの動きを追いかけよう

U面とD面のあいだで同じ色のパーツが交換されることもありうることに気付きました。なので、パーツの動きを正しく追いかけるためFMCのようなステッカーを貼って試行錯誤していました。これがかなり効果的だったように思います。1日目終了時点で、こんな感じです。

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ステッカーを貼って動きを観察する

2日目:実は4点交換の手順を見つけていたことに気づく

2日目です。翌朝目覚めて、上記の手順でコーナーも同時に交換されていることにようやく気付きました。 なぜ1日目の時点で気付かなかったのか…。

この手順を使うと、エッジとコーナーをセットにしたものが4セットあると考えたときに、その4点を交換できます。([DF,DRF]-[UB, URB]と[UR, URF]-[DR, DRB]が組になって交換される) この手順はあとあとも長く使うようになりました。

日中は実物がないので頭の中で考える

日中はスクエア-1の実物を持ち歩いていなかったので、パーツの交換を頭の中で追いかけたり、成型後の状態を記述するための記法を考えたりしていました。

U面を揃えるための手順を探す

ここまで、便宜的に30度の小さいパーツをエッジ、60度の大きいパーツをコーナーと呼んで進めてきました。上下で1つずつエッジが揃っていない状態になると、90度単位の回転ではどうやっても揃わないということに気付きます。 90度単位の回転では、エッジとコーナーがそれぞれ同じセットになった状態で動いてしまうため、どうやってもエッジだけを揃えることができないのです。

そこから決まった手順を思いつかずに試行錯誤しているうちに、U面とD面の色が揃いました。

あとはコーナーを揃えるだけ!と思いましたが、なかなかよい交換手順が見つかりません。1時間ほど格闘しますが、まったく見つかりません。

対面エッジの4点交換が見つかる

コーナーを揃える手順を探していたのに、なぜかエッジを交換する手順が見つかりました。 (1,0)/(-1,-1)/(0,1)というかなりシンプルな手順であり、なぜこれまで見つけられなかったのかわかりません。ほかのエッジやコーナーに影響しないので、これは3x3x3でいうM2と同等の操作であるということがわかりました。 いい感じの手順です。M2ができるならMやM'の手順もあるのでは?と考えながら、少し探索しましたが、見つかりません。(もし見つかっていたら、あとはRouxっぽく解けばLSEが揃わないかな?と期待していました…)

隣接するエッジのみの上下4点交換が見つかる?

この2日目の夜にいろいろ有益な手順が見つかりました。

おそらく最適な手順ではないのであまり書かなくてもよいのかもしれませんが、下記のような手順をやるとU面とD面のあいだで激しくエッジとコーナーが入れ替わります。このときはうまくエッジだけを交換できる手順ではないかと思って喜んでいたのですが、あらためて見るとほかのエッジやコーナーも影響されていますね。

(1,0)/(-3,-1)/(3,-3)/(3,-3)/(-2,0)/(-1,0)/(6,0)/(6,0)/

このあたりで2日目はタイムアップです。

3日目:引き続き試行錯誤を繰り返す

帰宅してからすぐにスクエア-1のステッカーを貼りなおしました。コーナーが回転するわけではないのですが、手順の実行前後でコーナーの向きがどう変わるかを観察するために、FMCのインサートのような貼り方に変えました。

長い交換手順が見つかる

U面3つのエッジとD面3つのエッジ、U面2つのコーナーとD面2つのコーナーが、それぞれ6点交換と4点交換を繰り返す巡回手順を見つけました。 手順を回してどこが交換されたかを確認するだけでも一苦労です。上記の激しく交換される手順を元に、(1,0)/ してからD面を何か動かして元通り成形される手順はないか、というのを探索していたら見つかったはずです。

エッジとコーナーをセットにして交換することを考える

単に成形状態を維持したまま交換するというのだけでは限界があるように感じたので、ほかの巡回手順(たとえばsexy move)などを間に挟んで、セットアップ&逆セットアップのように交換できないかを考えていきました。たとえば次のように巡回手順と交換手順を順番に並べて、任意の場所が交換されないか、というのを探索していくようなやり方です。結局この手順はぜんぜん役には立ちませんでしたが…。

巡回A (1,0)/(-1,2)/(0,1)
交換B (1,0)/(-1,-1)/(0,1)
巡回A’(0,-1)/(1,-2)/(-1,0)
 ABA’=UF-UR, DL-DF

気づいたら揃ってた

そんなことをしばらく繰り返していると、えっ? あれっ、揃った!? という感じで揃いました。

最後どのような交換に持ち込んでそろえたのかは、再現性のある手順にまとめられませんでした! しかし、揃ったものは揃ったのです!と思いながら、しばらく喜びの舞いを踊って過ごしました。 まったく合理的な手順ではないというのに…。

おわりに

解いている間には封印していましたが、これからスクエア-1を解くためのスピード解法の情報を調べるのを解禁します!

日本語でも英語でも、それなりに多くのリソースがあるようですから、時間をかければもっと効率的に揃えられるようになるでしょう。今回試行錯誤したことの一部も解法に組み込まれているでしょうから、まったく新しく学ぶことにはならないと思います。スピードキューブ界隈の先人たちが魔法のような手順や概念を発見/開発してくださっていることでしょう。スピードキューブはこのあたりの公開されているリソースが非常に潤沢なので、新しく始める者にとっては非常にありがたいなあと感じます。

参考:あのJ permも同じようなことを(もっと洗練されたやりかたで)やっています

これは解き終わってから気付いたのですが、かのJ Permもチュートリアルを読まずにスクエア-1を揃えるというチャレンジをやっていたようです。(2019/08/09))

私のように行き当たりばったりと試行錯誤をしていったのではなく、「Jpermさえ見つけられれば隣接エッジの交換もできるはずだし、Npermが来ても大丈夫!」という発想のもと、J permに相当する手順を探し出して解いています。 ちゃんと合理的に説明できるやり方ですね!すごい!

おしまい。

初学者への付録 (2020/05/22追記)

年末にスクエア-1と格闘してからもう5か月が経ちました。本記事を2019年12月に書いたあと、スピード解法についても基本的なことを調べて練習しました。そして、 2020年2月に開催された「綾瀬2020大会」で初めて公式大会での試技をしました。 (制限タイム2:00はどうにかクリアできる!という勢いで参加)

制限タイムは無事にクリアしましたが、カットオフ1:00は超えられず、単発1:17.85の記録だけが残る結果となりました。スクエア-1参加者のなかで一番遅いタイムになりましたが、非常に満足しました。(満足してしまって、それから全然スクエア-1を回していません)

さて、本記事をきっかけにスクエア-1に興味を持ってくださった方のために、まったくスクエア-1が解けないところから単発1分超にいくまでに参照したリソースをメモしておきましょう。そんな遅いのは嫌だ?もっと早くなりたい?きっと下記の素晴らしいサイトに書いてある内容をよく読めば、あっというまに1:00が切れるでしょう。

日本語記事

  • Square-1解法(初級編) - /直方体/ : 日本語記事としてはまずここから。最初にこれを読めば全体像がつかめるでしょう。回転記号、基本的な成形手順、エッジとコーナーの揃え方(CO/EO/CP/EP)、中段とUD面の調整など、揃えるまでのステップがわかりやすく並んでいます。
  • Square-1 解法 : 本当に揃えたい初心者向けのステップ・バイ・ステップの解法。画像がずらっと並んでいるだけなのでぎょっとしますが、各手順や形状に楽しい名前がついていて面白いです。スクエア-1でsub-10するksngさんが書いています。
  • スクエア1の成形の覚える順番 : タイトルの通り、覚える順番を書いた記事。
  • Square-1 (主に中級者向け) - スクエアなど : 「15~25s前後で伸び悩んでる人を主な対象に、自分がsub20程度から11~12s程度になるまでにやったこと」というターゲットの明確な記事。まだぜんぜん理解できません。

英語記事

  • Square-1 Tutorial | andrewknelson.com : Andrew Nelsonによる入門記事。パーツの名前、回転記号、成型、CO、EO、パリティ、CP、EPについて順番に解説していくチュートリアルです。冗長な表現も出てきますが、ステップを踏んで覚えていくので非常にわかりやすいです。それぞれに画像がついているのもいいですね。成形するとき形状の名前(kite/kiteや barrel/barrelなど)はここを読んで理解しました。それにしても変な名前!
  • Square-1 Full Cubeshape | andrewknelson.com : 上記サイトにある「成形の手順のすべて」。最初から全部を覚えようとしないように注釈付きですが、上級者は成形パタンほとんど覚えているんですよね?こわい。
  • CubeZone - Square-1 solution method - Overview : Lars Vandenberghによる解法の解説(2007)。成形の手順について詳述はありませんが「考えうる形状はこれだけだ」とわかりやすく図示してくれています。成形後の手順集として役立つ(かもしれない)サイト。私のタイム帯だと判断すべきパタンが多すぎて、まるで使いこなせていません。
  • Basic Square-1 Algorithms Advanced Square-1 Algorithms - Andy Klise : Andy KliseによるチュートリアルのPDF。初心者が学ぶべきアルゴリズムが全部PDFにまとまっているので素晴らしい!これを印刷して手元に置いておけば解けます。

動画チュートリアル

Brandon Linによる動画チュートリアル(2013)。動画を見てようやく持ち方や回し方がちょっとわかってきました。いろいろなパターンについて解説しながら回していくのですが、画面の左側から次から次へとスクエア-1が出てくるので「スクエア-1を何個持ってるの…!?」となること間違いなしです。

そのほか

Tingmanがスクエア-1の解き方を学んで解いてるという動画を公開していました。「こんな手順どうやって覚えるんだよ!」という魂の叫び/泣き言もありつつ、解き方をちゃんと覚えていく過程を軽妙に解説していて、面白いです。Tingman親子のファンです。「これは知ってる手順だぞ。このまえ覚えたやつだ」「ちゃんと解けたぞ!やった!」という学習と達成の喜びを感じられる素晴らしい動画です。ミレニアムファルコン型とか自分なりの名前を付けているのも大好きです。